ユーミスの丘

ドラ猫横丁0番地に住む猫たちの愉快な物語

その8 ボンジュの悲しみ

汗が収まった頃、家に入るとボンジュが湯たんぽの上にうずくまっていた。「ボンジュ!お土産あるよ!」 ミイが元気に声を掛けた。「ボン!早く食べてごらんよ!」 トムも笑顔を向けた。ボンジュは聞こえている筈なのに、ジッと下を向いたままだった。「ボン…

その7 ウサギの御馳走

ガラッ! Ⅾ型ハウスの戸を開ける音で僕たちは目が覚めた。今朝は旦那さんが馬の餌やりに来たことがすぐにわかった。奥さんだったらいつも大声で「ボンジュー、ボンジュー、お早う!」って必ず言うんだ。何も言わない時は旦那さんに決まっているのサ。 旦那さ…

その6 弟の帰宅 

この0番地付近には毎夜のように犬のゴンタとキツネのキンコがやって来る危険性があった。そのため僕らはオチオチ眠ってなどいられない。が、子供たちだけにはゆっくり眠らせてあげたくて、家にいる大人は注意を怠らない。こんな危険な目にあっているのを旦…

その5 妹が帰って来た

長い冬の夜が始まった。戸外は雪明りで、夏の夜とは比べ様もない程明るいが、ここⅮ型ハウス内の0番地は、闇の世界だ。ここに明かりが灯るのは、夜に旦那さんや奥さんが馬達に餌をつけに来るときだけだ。 楽しみにしていた餌を食む馬たちは騒々しい。吊るさ…

その4 ノン母さんの思い出

僕たちの母さんの名前はノン、弟一匹との二匹姉弟と聞く。叔父さん(母さんの弟)は僕たちが生まれる前に行方不明になったそうだ。 お祖母ちゃんの名前はニャンキロパー。奥さんが嫁に来る数年前に、ここの牧場に捨てられたと聞いている。ノン母さんが生まれ…

その3 もうすぐ、お正月だって!

湯たんぽがヒヤッとしてきたので目覚めると、どうやら夜が明けたようだ。間もなく「ボンジュ!ボンジュ!」 と奥さんの声がした。今朝は旦那さんじゃなくて奥さんが馬に餌をやりに来たようだ。ボンジュは奥さんのめんこだから、すぐに飛び出して行った。「ボ…

その2 大変な目にあったボンジュ

バターン! ドアを開ける音だ! 誰もがスクッと身を立てる。弾けるようにボンジュが駆け出して行った。 奥さんと旦那さんだ!僕らも後に続いた。 戸外へ出ると、ボンジュは雪が冷たいらしく、足をすくめながらも奥さん目がけて駆けていく。「アラー、ボンジ…

その1 マイ ファミリィ

ドラ猫横丁0番地は、ある牧場のカッター(乾草を切り刻む農業機械)の下をいう。そこには八十センチ四方のダンボール箱の僕たちの家、ニャンキーハウスがあるのだ。 僕の名前はブチニャン、来春で四歳になる。ブチニャンなんておかしな名前だが、ここの奥さ…